TKC BODY DESIGN
COLUMN スポーツ・競技

ハムストリングスの肉離れから、走れるようになるまで ── 陸上(短距離)の方の例

歩けるようになったのに、走るとなると怖い。肉離れのあと、何を目安に練習へ戻ればいいのか。現場で組み立ててきた順番をご紹介します。

2022年7月に書いた記事を、2026年10月に読みやすく手直ししました。文・TKC BODY DESIGN 代表 曽我武史

ハムストリングスの肉離れのあと

社会人で、マスターズ陸上に出場している方が来院されました。

1か月ほど前、スタートダッシュの練習中に、太ももの裏(ハムストリングス)に強い痛みを感じたそうです。

歩くのも痛い状態だったので、翌日に病院へ。診断は、ハムストリングスの肉離れでした。

けがをした直後は、普通に歩くことができないほど痛かったそうです。

そこから約1か月。日常生活ではだいぶ普通に動けるようになってきたので、そろそろ走れるかなと、軽いジョギングまでやってみたそうです。

この程度の動きなら、痛みはありませんでした。

とはいえ、これ以上スピードを上げられる感じはしない。

こうなってくると、何を基準に動いていいのかが分からなくなってしまった、ということでした。

おっしゃる通りだと思います。

歩いたり階段を上り下りしたりできても、いきなりダッシュができるわけではない。これはイメージがつきますよね。

「徐々に」と言っても、何か目安はないのか。そもそも、動いて良いのか。

こうした素朴な疑問は、誰にでもあると思います。

太ももの裏を気にするランナー

ネットで調べても、当てはまるかが分からない

これはよく聞く話のひとつです。

ネットで検索したり、YouTubeを見たりしても、自分の症状に当てはまるのかが分からない。

同じではないと分かっていても、似たような例をまねしてやってみて、意味があるのか。

その疑問が拭えない方がたくさんいます。

個人的な意見ですが、ネットの情報は参考にはなっても、ぴったり当てはまることは難しい場合が多いように思います。

ここでは参考までに、私が行っているアプローチの一部をご紹介します。

走るときの身体の使い方

私は陸上競技に長く関わってきたので、走ることについては、それなりに理解しているつもりです。

オリンピックや世界陸上に出場するレベルの選手たちと、10年以上関わってきました。そこで得た選手とのやりとりは、今でも私の財産です。

トップレベルの選手だけを継続的に診ていた時期は、毎回が楽しく、刺激的でした。その反面、過酷でもありました。結果が出なければ相手にされない、と私自身がいつも思っていたからです。

事実、ハムストリングスやふくらはぎの肉離れは、数えきれないほど経験しています。世界陸上やオリンピックの本番直前の合宿中に起きたこともあれば、大会の予選で「ピリッ」と違和感が出た選手もいました。

その分、試行錯誤もたくさん重ねてきました。

いちばん難しいのは、復帰までの段階をどう組み立てるかです。

本人の訴え(回復の度合い)を聞きながら、動きを評価して、運動の強さを決めていきます。この考え方は、ほかの種目にも応用しています。

陸上競技の場合、ただ走るだけではありません。細かい動きの確認や、その練習の意味まで掘り下げていきます。

100mを走るだけでも、局面を分けて考える

よーい、ドン。スタートからゴールまで。

走りの局面を大まかにでも分けて考えないと、競技への復帰に向けた練習のアドバイスはできません。

100m走の局面

今回の方は高校まで陸上部でしたが、練習の内容や組み立ては、トップ選手ほど細かくはなく、100mを走る練習をざっくりとされていたようでした。

ざっくりとですが、日常生活から練習を始めるまでの目安を並べてみます。

  • 靴の脱ぎ履き
  • 歩く
  • 階段の上り下り
  • 早歩き
  • ゆっくり軽く走る(小走りで10m程度)
  • 軽めのジョギング
  • 階段を踏み込んで駆け上がる
  • しっかり踏み込んでジョギング
  • 軽くスピードを上げる(30%)
  • 徐々にスピードを上げる(50%)

どの段階でも、急にスピードを上げたり、急に止まったりするのは注意が必要です。

体重をかけて踏み込んだときにどうか。

ある程度走れるようになったら、ピッチを上げられるか。

少しずつストライドを伸ばしていけるか。

ちょっとした動きで、筋肉が「ピクン」と収縮することがあります。これは、想定より負荷が強すぎるときに起きがちです。本人は一瞬「また傷めたかも」と思うくらいです。

この、強さを上げていくタイミングが、いちばん難しいところだと思います。

復帰の段階

見極めの判断には、いろいろな要素があります。ここは専門的な知識をもつ人と相談しながら進めた方がいいので、この記事では細かい記載を控えます。

一般的なリハビリの流れは、次のとおりです。

  • 柔軟性を取り戻す
  • 筋肉を適切に働かせる(段階的に、徐々に負荷を上げていく)
  • かばう動き(代償動作)がないかを確認しながら、走る動作につなげていく

練習の内容を細かく決める

いちばん危ないのは、急な加速や、無理にストライドを伸ばしていくことです。

走りには、加速の局面 → スピードを保つ局面 → 減速の局面があります。局面を意識しながら、少しずつ動いていくことをおすすめします。

走りの局面とスピード

距離によって、スピードの上がり方は違います。感覚ではなく、距離と局面を意識した練習が必要です。

スピードの変化

走り切るとき、100mで終わるつもりで走るのか、120m走るイメージでゴールするのか。

ゴールのイメージ

始めはピッチを上げていきます。動きの流れの中でストライドを伸ばしていきますが、いちばん大事なのは、地面をしっかり踏めることです。ストライドを伸ばすには、柔軟性と、脚を素早く引きつける動きが必要です。

まずは、日常生活で歩けるようになったら、歩きながら動きを作っていきます。このとき、痛みや怖さがないことが条件です。

  • 地面に足をつく感覚(足・膝・股関節・体幹のつながりを意識する)
  • 乗り込み
  • 徐々に加速
  • 一定の速さを保つ

こうして、少しずつ強さを上げていきます。この間に、自転車などで有酸素運動を始めても大丈夫です。

競技に合わせた復帰のサポート

陸上競技でも、種目(跳躍・長距離・投てきなど)によって練習の内容は違います。

球技、対人競技、乗馬など、ほかの競技でも、その競技に合わせた復帰のサポートをお伝えしています。

肉離れのあと、どこまで動いていいか迷っている方は、お気軽にご相談ください。

同じようなお悩みがある方は、LINEでお気軽にご相談ください。

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